大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)1913号 判決

被告人 植木正一

〔抄 録〕

本件控訴の趣意は本判決末尾添附の被告人及び弁護人I各作成名義の控訴趣意書のとおりであり、これに対し次のとおり判断する。

所論に鑑み本件記録を精査して按ずるに、被告人は昭和三一年二月二七日墨田簡易裁判所において窃盗罪で懲役一年但し三年間刑の執行を猶予する旨の判決を受け目下刑の執行猶予中であるに拘らず、再び本件犯行を犯すに至つたので、情状必ずしも憫諒すべきものとは認められないのである。しかし乍ら本件犯行は前記犯行の被害弁償を迫まられた結果金銭に窮し、実父大西雛吉方において同人の内縁の妻宮内力子所有の現金四〇〇〇円在中の手提鞄を窃取したというのであつて、被害者宮内力子も今日においては被告人の所為を宥恕しているのである。その他被告人の性行、経歴、境遇、家族の状況等諸般の事情を綜合すれば今一度被告人に対しては刑の執行を猶予して被告人をして自力による改善の機会を与えるのを相当と認める。しからば、これと趣を異にする原判決の量刑は重きにすぎ失当と認める。論旨は共に理由があり、原判決は破棄すべきものとする。

(久礼田 武田 石井文)

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